2015年夏(Class of 2017)からの米国MBA留学を目指す、某仕事人の軌跡

2010年10月18日月曜日

MIT Sloanビジットレポート




ビジットツアー3日目。

体調悪化のピークを迎えた様で、熱に加え鼻水と喉の痛みも加わり、最悪のコンディションだったが、解熱剤を投与し宿をチェックアウト。この日も割と過密スケジュールの一日。

【日本人在校生とのBreak fast Meeting】
会社元先輩より紹介頂き、総合商社から社費派遣で留学されている方からお時間を頂いた。アポ取りの際に、「弊自宅で朝食を採りながらで構いません」と言葉を頂いたので、留学後の生活感もイメージできるからいいか、と思い、お言葉に甘えてみることにした。

当日着いて驚き、ドアを開けるなり綺麗な奥さんがお出迎え、食卓には鮭のグリル、納豆、御飯、味噌汁と、見るもご丁寧な朝食を用意頂いており、逆に相当恐縮してしまった。とは言いながら、一旦会話のスイッチが入ると、会話は盛りあがった。

まず自己紹介。商社の金融事業部門にいること。商社のいわゆる事業投資ビジネスに携わっているが、投資後のValue Upを行うに苦心しており、いっそのことPEファンドに移ってドラスティックに取り組んだ方がよいのではないか、という考えを展開した。

この方は非常にスマートだった(将来役員まで昇格しそうな風格がある)。この方の所属する商社でも同じ問題はあるという。海外投資案件を行うには、まず現地パートナーを探し、JVを設立する。新規参入になればなるほどパートナー選びが重要になる。なぜなら知らない国でいきなり商社がValueを出せるはずはなく、基本的には現地パートナーに任せきりに近い状態になる。こういう「飛び石投資」の場合、商社が投資先をValue Upを発揮するには限界があるのだと彼は言っていた。


逆に商社がValue Upを行える状況についてはというと、複数産業関連のビジネスで既にある程度のネットワークがある国だという。例えば某国の車両部品メーカーA社に資本参画しようとした場合、別の部署が既に日系メーカーB社の産業機器の輸出事業を行っていれば、A社により質の高い部品製造機器を格安で納入したり、A社がロジスティクスに課題を持っていれば、物流会社C社を紹介する、と言ったように、商社のネットワークを使ってValue Upに貢献することができる。

これと実は表裏一体の現象がBostonで起きているという。Bostonはシリコンバレー程知名度はないが起業家が多い有数の街だとのこと。多くのベンチャー企業がBostonを目指して集まってくるというのだが、これは資金供給者(投資家、債権者)が多く、アライアンスを組める他の中小企業、自身がベンチャー企業であるがゆえにカバーできない機能(ITインフラ、広告代理店、営業コンサル etc)をサービスとして提供する企業が多いためだという。産業と機能が集積しているからこそ、多くの企業が集まるのだという。

つまり、産業の集積を自社&日系企業の力を使って「外部に持っていく」総合商社と、産業の集積があるがゆえに「外部から集まってくる」中小企業の共通点を、見事に描いたのだ。これには「なるほど!」と感心した。

更に話はPEファンドへ。Bostonで成功しているPE(1名~数十名)ファンドの共通点はその方なりに分析すると、「手の届く範囲」で投資及びValue Upを行っている点とのことだった。Boston内で、月1回は必ず対面できて、投資先のビジネス発展の為に自分の人脈を紹介する場合、すぐに繋げる距離にある、これがハンズオンの投資をできる条件であり、もっともValue Upを発揮できやすい環境である、との話だった。

PEでも商社でも、自分が馴染のない地域、産業などに無計画に投資すると「飛び石投資」になってしまい、Value Upに厳しさが伴うだろう。既にValue Upのネタが集積している場所での投資を試みるか、Value Upのネタを丸ごと持って行ける場所で投資を試みるか、このどちらかができれば大いに投資先の事業価値向上に寄与できるのではないか、との話だった。

後で考えてみると、上記の商社的な発想により企業や機能を左右繋げる外部的なアクションでValueを発揮することも、事業再生などにみられる企業体質を内側から作り直すことでValue Upを図ることもあり、このどちらの観点からもValue Upができることを認識しておくのが大事だと思う。

ここでの会話もまた、意義があるものだった。

その他彼との会話内容を箇条書きしておく。

・MITを選んだ理由は①Managementをシステム的に整理する"System dynamics"を研究する著名教授がいたから、②Bostonは学者・医者・研究者・起業家が集い人脈形成ができると考えたから、③エネルギー出身なのでエネルギー分野に強いと言われるMITがいいと思ったから、の3点
・授業に全て数字で番号が付けられており、さすが工学系と思わせるほど
・雪がひどいため、学生は校舎から徒歩5分程の場所にある2棟のタワーマンションの何れかに住む場合が多い


それから学校へ。ここでビジット担当のYさんに引き継ぎ、以降聴講、日本人とのランチへと対応頂いた。

【Industrial economics for strategic decisions】

ミクロ経済学が実社会にどう結び付くかを理解する授業。MITの名物教授とのことで、学生の意見を引き出しながら、理論の理解が必要なところは自ら説明する、というスタイルだった。囚人のジレンマがこの日の主題で、2社間での価格設定により互いの利益が上下する中であなたならどうする?という投げかけを教授が行い、学生はそれぞれの戦略を唱えていた。終盤で教授が再度理論(数式)でその日のTakeawayを確認して授業が終了、まとまりのある内容だった。

【日本人在校生とのランチ】

日本人在校生1・2年生バランス良く集まって頂いた。バックグラウンドはコンサル、政府系銀行、証券会社、総合商社と、技術系が一人もいなかったのが意外だった。



まず彼らが挙げたのがBostonという街の過ごしやすさ。白人の入植地である背景から、白人約8割を占める。学者が多く集まる街柄であるため治安が大変よく、学校間の情報交換も活発。冬は雪に閉ざされるものの、小さな街であるがゆえに活動には不便はないとの話があった。

全体的に在校生がほんわかしていて、HBSで感じたような鬼気迫る勢いは感じられなかった。聞くところによると、MITではカリスマではなく、Mildなリーダーを求めているとのことだ。"Hands & Minds"という学校特有の言い回しに特徴づけられる、「自分でやって、人に見せる」といういかにも日本の製造業的な価値観(というか世界的に製造業に共通することなのか?)が似合う校風であるとのことであった。

MITの特徴を聞くと、特に在校生が挙げたのが、「Labo」という特定のテーマのもとに、学校で学んだセオリーをActivateする活動の場であった。主要なのは以下で、複数のLaboを掛け持ちすることは可能だが、それぞれが割とヘビーなので、多くの学生が1つを選択するとのこと。各Labo内で5~6人程度のチームを組み、ここでメンバーの深い絆が形成されるらしい。

-Global Labo
-Entrepreneur Labo
-Sustainable Labo
-Finance Labo
-China Labo

また、2つ目の大きな特徴として、Club activityが活発で、毎日の様にそこらでGuest Speakerを招いての講演、Partyがあり、課外活動が充実していることを挙げていた。

インターンについても話題となった。ちょうど在校生の一人が有力PEファンドのBain Capital(日本法人)にインターンしたとの話があったので、詳しく聞いてみた。Whartonでのカーライル出身者との会話を踏まえ、投資後のValue UpにBain Capitalがどの程度コミットしているか聞いたところ、「商社でやっている程深くValue Upしていないのではないかという印象を持った。加えて、案件の絶対数が少なく、インターン生である自分に無理やり仕事をつくっている感があった」とのアンサーだった。ここでもまたPEに対する疑念が湧いたが、まぁ冷静に分析を続けてみるかと、割り切ることにした。

他のインターンについては、よくあるパターンだが、IBかコンサルが多く、次いで最近はPEが流行っており、それ以外は個別に興味を持った企業へドアノック方式で機会を見つけるとのことであった。

IBとコンサルに関して面白い話があったので、一つ。IBとコンサルにMBAホルダーが殺到する理由はよく、留学中の借金を返済する近道であるから、と言われる。そのためインターンは就職活動の一環であり、それゆえインターン先として最もメジャーな場である、ここまでは普通の話だ。


在校生から聞いた話によると、インターンは採用側から見れば「体力テスト」と位置付けていることが多いとのこと。敢えて消化しきれない程の業務量を与え、一定期間働かせまくったあげく、体質的に仕事に耐えられなければ不採用、耐えられればオファーを出す、との話もあるようだ。確かに採用する側される側ともこれを知らずに採用し、体か精神を壊してしまっては互いにUnhappyだ。人には体質というコントロールに限界がある領域が存在する。無理せずそれを見極め、自分の身の丈にあった労働環境を選ぶのは、賢明な人生を送るに欠かせないのだろう。

その他の会話内容は以下列挙しておく。

・1学年当たり350人、内日本人10人程度
・MITはエネルギー系ベンチャーに強い
・1st semesterのみCore、残りは全てElective
・LBS、IE、INSEADと交換留学制度あり
・PEはMITよりHBSが圧倒的に強い



【System dynamics】

ゲストスピーカーによる講義。GMのテレマティクス(車にGPSを取り付けて、事故時の自動通報、盗難時のエンジンオフ遠隔操作、タイヤ圧のチェック等を行うサービスをいう)開発に携わってきたマネージャーがスピーカーだった。どっぷりと太ったチョビ髭のオッサンで、コミカルなジョークを飛ばして良いキャラだった。先ずは口コミで認知を広めて収益を上げる。収益を上げて広告予算をつけて広告を打ち、更に売上を上げる。更に売上が上がることでR&D予算が確保され、サービスの質が向上する。サービスの質が向上されれば・・・といったように、プロダクト成長のダイナミズムを表現していて、興味深い内容であった。



 【Advanced corporate finance】

風邪と時差ボケによる不眠が続いているためか、強烈な睡魔に襲われ意識が所々飛んでしまった。ただ聞きとった内容はBSPLから単年度CFを計算し、一定の前提を置きながら5年間の事業計画を作成するというもので、仕事で日常的にやっているここと重なる部分が多く理解に苦しまなかった。ここでもある程度学生から意見を引き出しつつも、誰が説明しても変わりのない理論については、教授が解説するというもので、ディスカッションとは明分されていた。

と、こんなところであった。MIT全体的な印象としては以下。

・日本人の英語力が低い人が散見された。他Internationalもしかり
・製造業のバックグラウンドがあるからか、授業も学生もほのぼのした雰囲気だった
・勉強の中身そのものよりも、Guest Speakerから学べる機会が多そう
・正直、強い憧れや吸い込まれる魅力は感じなかった

これはある意味で、(甘く見ている訳でなく)自分がそこそこの努力をすれば入れそうだな、という印象の裏返しかもしれない。届かないレベルとも感じなかったし、かといってそのレベルに届いて本当に満足できるのか、という疑念も湧いた訳であった。

MITの様なプレッシャーの少ない環境でのびのびやるか、HBSの様にブートキャンプ方式で無理矢理レベルアップするか、同じBostonという街においてどちらの学校に入るかで、全く違う学生生活と卒業後のキャリアが開けている様な気がした2日間であった。



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